ブルース・リーが亡くなった1973年、『燃えよドラゴン』の大ヒットで日本列島を“ドラゴン・ブーム”が席巻し、当時1年間に約30本の香港製クンフー映画が公開された。その中で唯一、ハードなアクションをノンストップで繰り広げ、ブルース・リー主演作に匹敵する人気を博して大ヒットしたのが、倉田保昭が最強の悪役ブラック・ジャガーを演じた『帰って来たドラゴン』という作品だった。クンフー映画ファンの間では有名なこの映画だが、マスターネガの損傷により再上映やHD化が不可能といわれ、長らく幻の作品となっていたのだが、昨年夏に2K完全リマスターで劇場公開され、昨年末、念願のブルーレイ化が実現。そして先日、ようやくこのブルーレイを購入して初めてフルに観賞した。


この映画の存在自体は知っていたが、観る機会が無いまま何十年も過ぎてしまっていたが、今回のブルーレイ化でようやく鑑賞することが出来たことは感無量である。この映画に興味を持っていた理由は幾つかあるのだが、まずは製作・監督・脚本を手掛けたのがウー・シーユエンであったこと。ウー・シーユエンは、『ドランクモンキー/酔拳』を製作してジャッキー・チェンをブレイクさせた他、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』、『グランド・マスター』など、香港映画史に残る重要作品を数多く製作し、香港映画監督協会永遠名誉会長を務める香港映画界の超大物。ブルース・リーの死後に制作された『死亡の塔』も監督しているので、クンフー映画ファンの間では超有名な監督である。その彼が自ら、「倉田保昭日本凱旋50周年」のため、現存する最良の99分完全版マスターから2K化を行い、『帰って来たドラゴン』は遂に日本のスクリーンに奇跡の復活を果たすことになったという背景がある。


そして主演はブルース・リャン(梁小龍)という名前で70年代から多くのクンフー映画に主演しているアクション・レジェンドで、そのキレのあるアクションは筋金入りの本物だ。本作のアクション監督でもあり、『無敵のゴッドファーザー/ドラゴン世界を征く』や「闘え!ドラゴン」「Gメン’75」でも倉田保昭と激闘を繰り広げ、『カンフー・ハッスル』、『燃えよじじいドラゴン 龍虎激闘』など近年も現役で活躍する。ブルース・リーの死後に多くの“そっくりさん”が登場したが、ブルース・リャンもその1人と言えるが、その中でもかなりレベルの高いアクション俳優だったと言えよう。今回観賞して、どう見ても織田裕二にしか見えないルックスだが(笑)、アクションはなかなかのものだ。


主演はあくまでもブルース・リャンなのだが、やっぱりこの映画で一番の爪痕を残したのが倉田保昭だろう。映画の中盤でようやく登場するのだが、後半ブルース・リャンと対決するノンストップアクションは圧巻で、トンファーやヌンチャクアクションも登場し、まさにキレッキレのアクションを見せている。倉田保昭は、後に日本でのクンフー映画ブームに乗っかり、『闘え!ドラゴン』や『Gメン’75』などにも招聘され、日本のドラマでも大活躍することになったわけだが、その原点とも言えるアクションをこの映画で堪能できる。そして、倉田保昭は生前のブルース・リーを良く知る人物としてもかなり貴重な存在だ。


さて、今回初めて『帰ってきたドラゴン』を観た感想だが、正直1974年の映画にしてはちょっと画質が悪いし(これでもかなりリストアされている筈だが)、ちょっと古臭さが気になった。前半のくだりはかなり退屈でもあったし、物語の設定自体もかなりチープでお粗末だが、当時のB級クンフー映画の殆どがそうだったので、これはご愛嬌と言ったところ。しかし、やっぱり後半のブルース・リャンと倉田保昭の怒涛のノンストップアクション対決を観るだけでも価値のある映画だと言える。




僕はブルース・リーとジャッキー・チェンを始め、数多くのクンフー映画、アクション映画をこれまで観てきたので、生粋のクンフー映画ファンだが、この映画はシリアスなクンフー映画だったブルース・リーの時代と、コミカル路線を後に展開するジャッキー・チェンの間の端境期とも言える作品で、ちょっとコミカルな要素を入れようとしていることが確認出来るのも面白い。その意味では、この映画での成功から、後にウー・シー・ユエン監督の『ドランクモンキー/酔拳』への布石となったという意味では、“クンフー映画遺産”としてはかなり貴重な映画でもあり、この観点でもやっぱり一見の価値があるので、レジェンドの旬なアクションを確認したいクンフー映画ファンにはおススメしたい作品である。